ラオス 村の活動の中心になる子どもたち (会報31号 巻頭特集)

ラオス

2021年02月17日

リーダーとして活動することで、子どもたちが自らの可能性を広げるラオスの環境プロジェクト

経済発展が進む中で、ラオスの少数民族の村の生活の中にもプラスチック製品が急増しています。人々はごみを埋めるか燃やすか川に流すことで対処しており、ごみの投棄や焼却による環境/健康リスクが懸念されています。

そんな中、学校で “ごみを減らす” 活動をすると聞いて「きっと、ごみ拾いや掃除をさせられるんだろうな。」と嫌々参加した生徒たち。そこにお揃いのポロシャツを着た中学生が現れて、竹材やペットボトルのリサイクル方法を実演したり、環境問題を寸劇にして演じてみせたりしたので、みんなびっくりしてしまいました。

この中学生たちは、ラオスのサラワン県で始まった「EES: Environmental Education at School in southern Laos(環境プロジェクト)」のリーダーです。

これまで私たちAEFAがラオスの少数民族の村で目にしてきたのは、大人の前でおとなしくしている子どもたちでした。発言をうながしても緊張して言葉が出ないことが多く、グループ活動を企画したり大勢の人の前で自分の考えを発表したりする姿を見ることはほとんどありません。

その背景のひとつとして、年長者を敬い大切にするというラオスの文化があります。それ自体は尊いことですが、一方で、子どもの自主性や判断力が育たない、主張ができない、といった問題もあります。

大人が言うことは正しい、黙って大人の言うことに従っていればいい…限られた社会の中で、そんな風に子どもたちが育っていくことに危機感を抱いていたのが、AEFAのパートナーNGOであるACD(Association for Community Development)です。

環境プロジェクトは身近な“ごみの問題”をテーマとして、子どもたちが自分で考え行動する力を育てよう、自分たちの生活の場を守り、健全な環境をつくりだしていけるようにしよう、という思いからスタートしました。2019年、ACDとAEFAの協力のもとに、サラワン県サラワン郡ファイラ中学校とラオガム郡ヴァンプアイ中高校で活動を開始。続けて、2020年にはナボーン中高校・ホーコンナイ・ビエンカム・クアセットの各中学校でも開始しました。いずれもAEFAの支援校です。

このプロジェクトの最大の特徴は、「ユース・ボランティア」と呼ばれる子どもたちが活動のリーダーであるという点でしょう。自分の学校の生徒たち、さらには近隣の学校の児童生徒や村の大人たちにも環境意識を啓蒙するという重要な使命を、子どもたちが担うのです。

活動に先立ちユース・ボランティアたちはACDが行うトレーニングに参加します。そこでは、ごみの種類やリサイクルなどについて知識を得るだけでなく、啓蒙活動のプランニング方法やリーダーシップ・スキル、そして、いかに“楽しく”人々を活動に巻き込んでいくかを学びます。また、学校や村の地図を作り、どこにごみが投棄されやすいか、なぜそこに捨てられるのかを考える、というワークショップも行います。

トレーニングを受講したユース・ボランティアたちにより、2019年5月、ファイラ中学校で活動が開始されました。初回は「村の現状と、あるべき姿」についてのプレゼンテーションがメインでしたが、人前で自分の考えを述べたりする経験がほとんどなかった子どもたちにとって、これは大きな一歩でした。その後、活動を続ける中でユース・ボランティアたちは徐々に自主性を高め、活動内容も充実させています。新しく加わったプログラムのひとつは、ペットボトルをほうきにリサイクルするもの。ペットボトルを細く割いて板に巻き付け、お湯で煮て形状を整えると、まっすぐなひも状になるので、これを束ねてほうきにします。これはユース・ボランティアたち自身の発案によるプログラムです。また、参加生徒たちがより楽しく環境問題について考えられるようにゲームや寸劇、クイズを取り入れるなど、さまざまな工夫を重ねています。

村の人々への啓蒙手段はというと、ラジオです。ユース・ボランティアの子どもたちはラジオ放送についても学んでおり、自分たちでラジオ番組を考えて、週に二回放送します。ラオスでは皆でご飯を食べ、歌ったり踊ったり、とんち話や笑い話などをわいわい語るのがなによりの娯楽。ラジオ番組でも、環境に関する話をコメディ仕立てにしたり、音楽リクエストを取り入れたりして、楽しく聞ける工夫をしています。

環境プロジェクトには、ひとつ重要な狙いがありました。それは、「子どもたちが何を言ってもいい、安全な場を提供すること」です。ユース・ボランティア向けのトレーニングや各学校でのイベントには、ACDスタッフや教育スポーツ省の職員、学校の教師、村の幹部など、合わせて数十名の大人も参加してサポートします。その中で、あなたたちは大人の前で自由に発言していいんだよ、自分で考えるって素晴らしいことだよ、わたしたち大人はそれを応援するよ、ということを子どもたちに伝えたいと考えているのです。

学校の生徒たちは、この活動のリーダーであるクラスメイトの変化を感じています。「ユース・ボランティアになった友達がすごく変わった。自信をもって話すようになったし、リーダーとしていろいろ教えてくれるようになった。わたしもユース・ボランティアになりたかった!」と、ある生徒。

ユース・ボランティアの保護者のひとりであるカーンさんは「うちの子たちはこの活動のことが大好きみたい。いろんなことが学べるのがすごくうれしいと言っています。家で話題にすることもこれまでとは全然違って、家庭やコミュニティについて話をするようになったわ。」と言います。

「うちの息子が放課後や週末に活動するとか言い出して、最初は友達とほっつき歩くための口実だろうと思ったんだよ。」と言うのはデーンさん。「先生が活動のことを説明してくれた。そのときは、こんな田舎じゃ難しいんじゃないかと思ったけど、たいしたもんだね!うちの息子がメンバーだなんて、うれしいよ。」

ユース・ボランティアのメンバーは、自らボランティアに立候補し、ACDによる面接等を経て選ばれた子どもたちです。メンバーのひとりであるロッチャナさんは「自分のパワーとエネルギーを環境のために使う機会がついに来た、これを逃してはならない、と思いました。」と言います。同じくメンバーのソムサイくんは「ごみの問題は、個人的に気にしているだけだった。それが変わった。」と言います。そして、多くのメンバーが「もっといろんなことを知りたい、経験したい」と言います。子どもたちが得たのは、人前で話せるようになったという自信だけではないのです。

環境保護への関心やごみに関する問題意識、何かやらなければという漠然とした思いなどを、自分ひとりの胸の内に抱えていた子どもたち。環境プロジェクトという場を得て、それぞれの持つ可能性の前に扉が開きつつあります。

子どもたちひとりひとりが自分らしく、かつ、自立して生きる力を身につけるために、子どもの可能性を信じて、大人が手を差し伸べる。これからもACDとAEFAのチャレンジは続きます。

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