私が55年前(高校時代)の日記に、感銘を受けた堀口大学の詩が書き込んであります。次のような詩です。(一部省略)
苔の下茂る葉のかげ 岩清水清らかに湧く・・
いつの代の古へよりか 岩清水湧きて帰らず
行く末の流れの果ては 土深く潜りて見えね・・
名さえなき旅路の果し 行過ぐる麓の里に
村人の井戸を掘りたり この水のいわれも知らで
村人よ心を洗え この水の密やかなれど
この水の言挙げせねど この水の澄みて照りたり
私は、この水のようになりたいと思いました。社会の役に立つ地下水のように、この井戸水のようになりたいと思いました。心の奥深くには、水がシーンと静まり返って光っているような、そのような心を持つ人になりたいと思いました。何時か誰かに汲み上げられて飲まれるまで、控え目で自己主張しないで、それでいて苛立ちもせず、じっと時が満ちるのを待てるような、そのような人間になりたいと思いました。
AEFAは今年、11事業年度を迎えました。言挙げせず、「黒子に徹して頑張ろう」を合言葉に、これまで11年間頑張ってきました。時満ちて今、AEFAの井戸水を飲んで下さっている多くの人たちがいます。有難いことです。AEFAのこれからの10年。この井戸水の如く、シンと静まり返って澄み切って輝いていたいものです。
AEFAは学校建設と国際交流という2つの事業をしてきました。学校とは校舎と言う箱ではありません。学ぶ仕組みと環境です。生徒、先生、親、村人、行政により総合的に成り立つものです。だから私たちAEFAは箱物プロジェクトではなく、これらの関係者と総合的、合理的、そして心で結びつき、協力し合ってプロジェクト推進してきました。
その基本的骨格が3層構造であり、「共に作り、育て、見守る」です。これらの理念と仕組みを推進するには、3つのパートナーとの信頼関係が必要です。
第1に、現地NGOとの信頼関係です。今やパートナーと言うより、「ファミリー」「兄弟」関係にまで深まりました。
第2に、支援者との信頼関係です。「日本のビッグパパ、ビッグママ」を生み出してきました。開校式では、一緒に歓びの涙を流しています。
AEFAは「嬉し涙製造所」です。
第3に、日本の学校との信頼関係です。発足当時は、交流校探しに本当に苦労しましたが、昨年度から東京都教育庁の紹介で、年間40校以上が出前授業を希望してきています。この10年で360回の授業を実施しました。将に、信頼関係が確立したと言えます。
アジアの子供たちにとって、学校建設は教育環境の大改善であり、交流事業は外の世界とのつながりを学ぶ機会です。
しかし、交流の真の受益者は日本の子供たちです。「命の大切さ」「教育の大切さ」「心の豊かさ」などを学ぶ気付き学習のお手伝いをしてきました。
アジアの子供たちの健気で逞しい生き方と笑顔を届ける「笑顔の宅急便」です。そして、交流とは「心のリレー」。AEFAは「思いやりのバトン」の届け役です。
こうした3つの信頼関係を基礎にして、一方通行ではない、双方向性を持つ海外支援プロジェクトを継続することができました。
その背景には、必要なときに必要な人との出会いがありました。将に、時が満ちるのです。
新たな一歩を歩みだしたAEFA。これからも皆様との出会いを大切に、一層精進して參ります。
2014年6月15日は創立10周年記念日である。
9年間で173校建設した。AEFAの建設校で学ぶ生徒総数は2005年には8校・800名弱であったが、現在は173校(623室)・2万2千名を越えている。卒業生の数も9年間で2万人を越えたことになる。
AEFAの最大の特徴は交流事業であるが、日本の子供達の気付き学習・国際理解教育の支援も大きく発展した。出前授業は累計280回を数えた。特筆すべきは、昨年7月に東京都教育委員会から都内の各教育委員会宛にAEFAの出前授業案内が出され、新規に都内32校で授業を実施できた。将に今昔の感がある。
AEFAの次の目標は「100人の教師の養成」である。
学校を「生み・育て・見守る」から更に一歩踏み出し、先生を生み・育て・見守る10年にしたい。ソフト支援資金集めの困難を乗り越えて、是非成功させたい。一方、日本では本気の先生達を糾合して、「熱血先生の会」を立上げたいものだ。今年はその準備の年となろう。
AEFAは今年、創立10周年を迎える。「石の上にも3年。10年経てば本物になる」と言われるが、果して本物になれるか。素晴らしい天命とご縁に恵まれた10年。今年こそ真の意味でAEFA第二の創業の年だ。
AEFAとつながって下さった皆様一人ひとりに感謝しつつ、次なる10年も皆様と共に歩ませて頂きたい。皆様とのつながりの結果である活動の一つ一つが、感動と共感を生むように、それを皆様にお届け出来るように、頑張る所存である。
昨年1月、初外遊の安倍晋三首相夫妻主催の、ベトナムの子供達との交歓会をお手伝いした。心は繋がっている。子供達の純粋な心こそ世界をつなぎ、未来をつなぐのだ。子供達は国の宝、教育は国の礎を築くものだと実感した。教育の原点は人間力形成=思いやりの心の形成にあると考える。「子供たちの育ちと見守り」を軸足にして、「人のために生きる意味」を伝えるNPOとして今年も邁進したい。
何時の頃からか、何時の頃からか、AEFAはそれ自体が生命を持っていると感じるようになった。実に逞しい生命力なのだ。これまで何度も困難に遭遇してきた。もう、駄目かなと思ったことも一再ならずある。それが、不思議にもある種の「時が満ちて」条件が整うのだ。実に不思議である。ただもう、AEFAが独自の力と生命力で、私たちを働かせているとしか言いようがない。
こうしてあっという間に9年間が過ぎた。振り返ると、そこに存在する数多くの出会いと大きな輪=和の広がりを感じることが出来る。今後も、より多くの困難と出会いがあるだろう。AEFAは、応援してくださる多くの人たちの嬉し涙・共感の涙を製造する「嬉し涙製造所」でありたい。そのたびに、みなさんと共にうれし涙をこぼす私である。
AEFA活動の二本柱のひとつが、交流を通し、日本の子どもたちの情操教育・徳育推進を図ること。日本の子どもたちへの働きかけ=人間力をつけるための教育への一石の積み上げを目指したいと思っている。幸いにも、これまで交流事業を推進してきた学校は延べ100校以上にもなる。交流教育実践の中で生まれた良い結果を伝えながら、本年度は更に中身を深めて交流事業を推進する決意である。
数学で学ぶ「0と1の差」は1である。しかし実際の行動におけるゼロと1の差は無限大である。一歩踏み出すことと何もしないこととの間には無限大の差・開き・違いがある。行動を起こすことで、気持ちが変わり人生すら変わるのだ。別な新しい人間にもなれるのだ。まさに無限大の差があるのだと思う。この差を飛び越える力は何だろうか。勇気であり、思いやりであり、愛であり、志であろう。一歩踏み出せる人間になることを皆さんに伝えられれば本望である。
東京でのフォーラム総括研究会とラオスにおける関係NGOミーティング。国内外とのメンバーの語り合いの中に吐露された熱き思いこそが大きな成果でもあった。そこには共通する「志」があった。AEFAを潤す2つの水源を確認した。「先生たちが持つ使命感とNGOの熱き心」である。この2つを大きな水源にして、AEFAは川の役目を果たそう。この2つの水源は決して涸れないのだから。
日本人の美点や弱点が見えた半年であった。美点を伸ばすために子どもたちの徳育を促し、弱点を補うため子どもたちの心の強化を図る。AEFA活動を通じ子供たちに自らを振り返る機会を届けたい。気付き学習を通じ、世界は心で繋がっていることを知ってほしい。AEFAは心のリレーを推進しているのだ。鯉のぼりに込められた応援と感謝の心。返歌に込められた感謝と誓いの心。こうした活動を今後とも一層進めたいものである。
東日本が大地震大津波に襲われた。全世界からの支援・協力の動き。将に「世界が助け合う心でつながる」と確認できる。AEFAが建設した学校の教員・子どもたちからのメッセージがある。自分たちが極貧にありながら、日本のために何か力になりたいというメッセージや祈り。なんとも嬉しい限りである。これまで推進してきた交流事業が、心の交流であったことの証しでもあるように思えてならない。
次の挑戦は第三の扉を開くことです。第一は学校の門扉というトビラでした。第二は教室のトビラ。教室という「聖域」に入り、出前授業で子どもたちに直接語りかけることが出来るようになりました。第三は保護者の心というトビラです。保護者にも交流の成果を実感して頂きたい。その扉は何処にあるのか。どのようにすれば開くのか。ワンコイン・スクール、頑張りカード運動を通じて少し開き始めましたが、将にこれからです。
新しい理念への挑戦、それが「育てる」という理念です。毎年建設後の学校を訪れ、学校をフォローしてきました。村を訪れると、学校が変わり、子供たちが成長し、村が変わっていくのが分かります。今年からは、本格的に学校を育てる事業を立ち上げ、見守っていきたいと思います。奨学金プログラム、教師育成プログラム、教科書基金・教材基金・教師基金など、支援者の希望や意図を反映した支援メニューを開発します。
一貫して「子供の目線で考える」を常に意識しながら、学校建設事業と国際交流事業を推進してきた。そうした中で暖めてきたのが「子供達の資金で創る夢の学校」建設構想です。子供達1万人が自分で稼いだ500円(ワンコイン)を寄付することで、子供達のアイディアを生かした建設企画をもとに建設し、完成した学校の壁には寄付した子供たちの名前を刻んだ銘版をはめ込む。一朝一夕では出来ない難しい企画ですが、今年こそはスタートさせたいと思います。
NGO活動と言うものは、実社会=経済社会から遊離したものであってはならない。AEFAは実社会の骨組みの中に存在しているという自覚と、その基盤作りにも一部参加しているのだという自負を持って、活動すべきでしょう。広く一般企業に支援を求めるには「理念の普遍性とアピールする力」と「具体的且つ直接的成果」が必要です。一般企業から支援を得ることが出来て初めて1人前。新しい挑戦が始まります。